MASAHIRORIN’s diary

夜麻傘(MASAHIRORIN)の跡地

 荘厳、と言うべきだろうか?
中に入ると、すぐに広いホールになっており、人が10人寄り添った程の太い柱が天井に伸びていて屋根を支えている。
 その全てが石造りの様で、これもまた白い。床もまた同じく、こちらは鏡の様に磨かれており、明はそこに映る自分の顔を見ていた。
 それなりに人が入っているようで、そこここで話し声が聞こえている。教会も兼ねている、というのは本当らしいが、やはり高級志向が否めないこの場には不釣合いの施設だと、明は思っていた。


 髭男は、二人を”こっちだ”手招きしている。行く先には受付らしきものがあり、二十歳を少し過ぎた程度の女性がカウンター越しに座っていた。
「やぁ〜ヘレン、今日もまた一段と綺麗だねぇ。」
 ・・・・・・何故ナンパ?
「こんにちは、ガイさん。門番のお仕事はどうしました?」
 そして、軽く往なした。
 そういえば、と明は髭男の名前を今知ったのだが、何とも様になりすぎた名前だ、と同時に、安直すぎると思った。
 軽く往なされたガイだが、特に気にした風も無く―彼等にとっては日常なのだろう―二人の事を受付―ヘレンと言うらしい―に説明した。
 明は、何とも変わった二人組みなので少し戸惑うんじゃないか?と思ったが、当のヘレンは、然程驚く様子も無く坦々と説明を聞いていた。
 ふと、数秒だけ彼女が無表情に硬直した間があったが、どう対処して良い物か考えていたらしい。その後すぐに口を開き、二人に言った。
「それでは、お二人の事を領主様にお伝えしまして、その上で宿泊できるか聞いて参ります。」
 と言ったが、明はそれじゃあ駄目と言われたら泊まれないのかと聞くと、
「形式上、やらないといけないだけの事ですので、駄目とおっしゃる事は無いでしょう。それにお二人共野盗に襲われた被害者ですから。」
 だと言う。
 どうやら、宿の無い者を路頭に放り出す程、領主という男は冷たくないらしい。
「では、行って参りますのでしばらくこの施設内の見学でもなさっていて下さい。」
 失礼します。とヘレンは軽く頭を下げて、ホールの奥にある木の扉の奥へと入っていった。
 さて、ほったらかされてどうしようと明は思ったが、ルナはそれほど困った様子は無く、じゃぁ見学しようといった様子だった。
「それじゃ、俺は仕事に戻るから二人とも、変な問題起こすなよ。」
 気をつけないと首が飛ぶぞっと明るい口調で、親指を首の辺りで横一文字に切る仕草をした。本人にとっては軽いジョークらしいが、笑えない。
 じゃぁな、と振り向き様に軽く手を振り、ガイは出ていった。