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馬鹿は高い所がすきという。
幼稚園児のころに、良く記の上に登って叫んでいたので、自分は馬鹿なのだろうな、と明は自己完結型思考を展開していた。
階段を上って3階に出ると、2階に比べて様相が豪華になった。
廊下が伸びて扉が並んでいることに変わりはないが、その廊下には靴底が軽く沈む程度の絨毯が敷かれており、扉には彫刻が入っていて、光物で彩られていた。
その変化に、明は驚くこと無く廊下に歩を進めた。
それぞれの扉に、文字と思しき彫刻の入った銀のプレートが飾られていたが、明には読めないものだったので、実に残念な顔もしていないのに残念だと口にした。
2階に比べると、窓からの日差しが強い。
いつの間にか、橙色の夕日に変わった日の光に明は気づき、目を細めて陽光が射す窓を眺めた。
何分か・・・。
たった何秒かの間かもしれないが、それは時間の流れを忘れてしまう一時だったのかもしれない。
そして明は、何事も無かったかのように、また歩き始めた。
やがて、明は視線の先に行き止まりを見つけると、その行き止まりの壁には一際目立つ扉があった。
学校の廊下というものは、普通はその両端に階段が設けられているものだが、この建物にそんな常識は無いらしい。
他のきらびやかな扉とは打って変わって、金属で出来たイカにもな扉がドンと据えられていた。
「・・・・・・。」
明は扉に近づき、無表情で輝いた目をしながらじっくりと観察し始めた。
両開きの扉で、金属にしては少し明るい銀色をしている。その表面には曲線が目立つ模様が広がっており、扉と同じ素材で出来ていそうな取っ手にカンヌキと、その上に鎖で巻かれてシッカリとした錠前が取り付けられている。
明のアンテナが受信する。
「ボス部屋か?」
ゲーム大好き人間に、残念ながら常識のある言葉は無かった。
何を思ったのか、明はその扉を2回、ノックした。
金属の割りにはコンコン、と控えめな音出し、相当分厚く出来ている事が伺える。小学生のノック程度では響くことはなかった。
そして、特に何の反応も返ってこないことを確認すると、明はサッパリと諦めた様子で、踵を返して元の来た道を戻ろうとした。
「ダレ・・・?」